口腔内の歯科金属などが原因でアレルギー疾患が起こる症例があります。
そのような場合には、その原因となっている金属をパッチテストによって特定し、撤去・交換する必要があります。

一般に金属アレルギーでは口腔外に発症することが多く、接触皮膚炎、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、異汗性湿疹(いかんせいしっしん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)その他とされています。
言うまでもなく、これらの疾患と類似の疾患や原因(例えば掌蹠膿疱症では口蓋扁桃や副鼻腔の慢性炎症、あるいは歯周炎などの病巣感染、また扁平苔癬ではカンジダ症やC型肝炎、など)との鑑別は極めて重要です。
ピアス等の体表に接する金属製品や口腔内の金属がイオン化溶出して、体表のタンパクと結合し、完全抗原となり、ランゲルハンス細胞などの関与で感作が成立して、再度、同一金属と接触することで発症するとされていますが、機序の詳細は明らかではありません。

金属アレルギーの検査法

患者への侵襲が比較的少なく、多種類のアレルゲンを同時に調べることができるパッチテストが多用されています。
歯科で使われている金属や生活用品の中の金属などの 20種類ほどの試薬が市販されています。
専用の絆創膏上に試薬を滴下し、背部に2日間添付し、除去後の皮膚反応を2日後、3日後、さらに7日後にも判定します。
金属アレルギーでは反応が遅れて出る場合が多く、3日までですと判定を誤るからです。

金属アレルギーの治療 -抗原除去療法-

疾患が皮膚科領域であれば掻痒(そうよう)などの対処療法がまず必要で、パッチテストなども含めて皮膚科医と歯科医の協力が極めて重要になります。
歯科金属がアレルゲンではないかと疑われる場合、成人の口腔内には多数の詰め物や金属冠等の補綴物が装着されています。視診のみではその組成金属の種類は判りません。それぞれからごく微量(約 0.1mg)のサンプルを採取分析し、アレルゲンを含むものを特定し、それのみを撤去、交換します。これは歯科的な抗原除去療法です。
大変手のかかる厄介な治療になりますので、パッチテストは確認テストを必ず行うようにして下さい。
こうした治療の後、早い場合は2~3ヶ月で快方に向かいますが、1~2年を要することもあります。
その理由はアレルゲン金属は分解されず、体内から排出されるのに時間を要するためだと考えられています。金属アレルギーの一次予防は現状では困難ですが、上皮下の組織に金属が直接接するピアスは避けるべきでしょう。二次予防は皮膚科医と歯科医の連携の下、アレルゲン金属が判明したときは、これを含有しない材料で歯科処置を行うべきです 。