睡眠時無呼吸症候群( Sleep Apnea Syndrome ;SAS )とは、睡眠時に呼吸停止または低呼吸になる疾患で、睡眠中に無呼吸 (10 秒以上の呼吸停止状態 ) を断続的に繰り返すことにより、日中の強い眠気などの症状を呈します。
また無呼吸が続くことにより、高血圧、高脂血症、不整脈、心疾患、脳血管障害、糖尿病などを併発し、生存率の低下を招くことにもなります。

睡眠時無呼吸症候群には、次の3種類に分類されますが、ほとんどは閉塞型です。

  1. 閉塞型睡眠時無呼吸症候群
      上気道(鼻から鼻腔、鼻咽腔、咽頭、喉頭)の閉塞によるもので呼吸運動はある。
  2. 中枢型睡眠時無呼吸症候群
      呼吸中枢の障害により呼吸運動が消失するもの。
  3. 混合型睡眠時無呼吸症候群
      閉塞型と中枢型の混合したもの。

ここでは歯科におけるマウスピース治療の対象となる睡眠時無呼吸症候群に関して説明します。

【原因】

閉塞型睡眠時無呼吸症候群

睡眠中の筋弛緩により舌根部や軟口蓋が下がり気道を閉塞することが主な原因です。
肥満、上気道形態や姿勢等が原因で舌が喉の方に下がることにより気道が狭められ、呼吸が妨げられることで発生します。特徴的な体型的として、肥満・小下顎症・舌の肥大などがあげられます。

【治療】

○減量療法

患者が肥満者の場合、減量により上気道周辺の脂肪の重さによる狭窄を改善します。

○持続陽圧呼吸療法

n-CPAP ( nasal continuous positive airway pressure ; ネーザルシーパップ)装置よりチューブを経由して鼻につけたマスクに加圧された空気を送り、その空気が舌根の周囲の軟部組織を拡張することで吸気時の気道狭窄を防ぐ方法です。
n-CPAP の場合は、原因部位に関わらず、カバーする事が可能な治療であり、身体に侵襲はありません。
しかし毎睡眠時にマスクを装着しなければならない手間と、装置がいかに小型化してきたといっても携帯性は不便です。

◎マウスピース療法

マウスピースを用いて下顎を前方へ誘導させた状態で固定し、気道の狭窄を防ぐ方法です。
平成 16 年 4 月から、「医科で睡眠時無呼吸症と診断され紹介された歯科医院」に限って健康保険の適応になりました。

保険適応となる条件は、

  1. PSG: 終夜睡眠ポリグラフィ検査を受ける事
  2. PSG 検査の結果、睡眠時無呼吸症候群であると診断される事
      無呼吸指数 ( 睡眠 1 時間中に 10 秒以上呼吸の停止する回数 ):AI > 5 回 / 時間
  3. 医師の治療依頼
      医科医療機関からの情報提供が必要。

上記の場合以外は、保険の適応は受けられず、自由診療 ( 自費 ) となります。

– 長所

  • 他の治療法に比べて安価である。
  • コンパクトで持ち運びに便利である。
  • 手術が必要でなく歯の型をとるだけで簡単に作成できる。
  • 装着が容易にできる。

– 短所

  • 歯を固定源にするので、残っている歯が少ない方 (20 本未満 ) にはできません。
  • 重度の歯周病の方でも困難な場合があります。
  • 顎関節の痛みが出現する、唾液の分泌が過剰になる、などの問題が発生する事もあります。
  • 鼻の通りがいつも悪い方の場合には、まず、耳鼻咽喉科での診察も受けた方がよい場合もあり、また、神経質で寝つきの悪い方の場合には、医師とよく相談をされた上で、治療法について選択される事がおすすめです。

この装具を口腔内に装着することで、下顎・舌を挙上し、咽頭部に適度な空間を確保し、気道が広がって、睡眠中のイビキや無呼吸がなくなります。

適応症であれば、イビキ・無呼吸の抑止効果はほぼ 100 %に認められ、 QOL にも合致するという報告もされています。

○外科的治療

(UPPP: 口蓋垂軟口蓋咽頭形成術、扁桃・アデノイド除去手術、下顎骨前方移動術、など ) →口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除し、気道を広げる。