【顎関節症の概念(2013年)】

顎関節症は、顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節(雑)音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする障害の包括的診断名である。その病態には咀嚼筋痛障害、顎関節痛障害、顎関節円板障害および変形性顎関節症である。

簡単に説明すると、顎関節症とは顎の関節やそれに関わる筋肉や噛み合わせなどに生じる様々な症状の総称です。これにより顎の機能(顎の開け閉めや、咀嚼など)に不具合が生じます。最近は顎関節だけでなく、顎や顔面においての痛みや機能の不具合も含めて考えています。
顎関節症には、安静にしているだけでて治癒してしまうものから、専門的な指導や治療が必要な場合などが必要なものまであり、様々な病態を呈します。しかし、進行的に顎の機能が破壊されてしまうことはほとんどありません。

顎関節症の症状としては、口を開けたり、閉めたりすると痛い、 あごを動かすときに異常な音がする 、口が大きく開かない、閉じない 、噛み合わせが変わってきた 、こめかみやほほのあたりが何もしなくても痛い、などさまざまな症状があります。

患者さんひとりひとりに、それぞれの原因があり、症状もさまざまですので、病院で顎関節症と診断されたとしても、みんなが同じ病気ではありません。そこでわれわれは、部位や障害度によって顎関節症を分類しています。

 

顎関節症の病態分類(2013年)

  • 咀嚼筋痛障害 myalgia of the masticatory muscle (I型)
  • 顎関節痛障害 arthralgia of the temporomandibular joint (II型)
  • 顎関節円板障害 temporomandibular joint disc displacement (III型)
    1. 複位性 with reduction
    2. 非複位性 without reduction
  • 変形性顎関節症 osteoarthrosis/osteoarthritis of the temporomandibular joint (IV型)
    注1 重複診断を要する。
    注2 顎関節円板障害の大部分は顎関節円板の前方転移、前内方転移あるいは前外方転移であるが、内方転移、外方転移、後方転移、開口時の関節円板後方転移等を含む。
    注3 間歇ロックの基本的な病態は復位性関節円板前方転位であることから、復位性顎関節円板障害に含める。

 

日本顎関節学会の顎関節症の症型分類( 2001 )

1.顎関節症 I 型 咀嚼筋障害
咀嚼筋障害を主徴候としたもの?
→頬やこめかみの筋肉だけに痛みをもつタイプ?
2.顎関節症 II 型 関節包・靱帯障害
円板後部組織・関節包・靱帯の慢性外傷性病変を主徴候としたもの?
→関節を包む組織の障害で顎関節だけに痛みのあるタイプ(他の関節にみられる捻挫に似たもの)
3.顎関節症 III 型 関節円板障害
関節円板の異常を主徴候としたもの?
a :復位を伴うもの
b :復位を伴わないもの
→関節円板の位置のずれや変形があることで、 “ カクカク ” といった開閉口時の音がでたり、変形が大きいと口が途中までしか開かなくなります?
4.顎関節症 IV 型 変形性関節症

退行性病変を主徴候としたもの?
→関節を作っている骨の表面が吸収されたり、それだけでなく周囲に骨が新たな骨が作られるために変形した形になります。強い変形を伴うものは、非常にまれで、多くはある程度変形したところでそれ以上進行しなくなります?
関節円板障害を同時にもっていることが多く、その場合は “ ザラザラ ”“ ギシギシ ” といった音がでることもあります?

5.顎関節症 V 型 I ~ IV 型に該当しないもの

 

正常関節円板
顎関節症III型a
(復位性円板前方転移)
顎関節症III型b
(非復位性円板前方転移)

顎関節症の治療

顎関節症の治療はそれぞれの症例に応じて、スプリント療法、運動療法、理学療法、薬物療法、関節腔内注射、関節腔洗浄などを行います。

最近顎関節症は生活上のいろいろな因子が症状の出現に関係することがわかってきました。その因子とは、かみ合わせであったり歯ぎしりや食いしばり、精神的な問題、社会活動や人間関係であるかもしれません。そのような因子をまず自ら取り除くよう生活習慣の改善も重要な治療と考えております。つまり患者さん自らが積極的に治療に参加し、われわれはそのお手伝いをすることで一緒に医療に参加していただくことが重要であると考えています。以前主流だったスプリント療法よりも最近は運動療法(円板整位運動、関節可動化訓練など)により治療効果を得られた症例が増えてきております。

さまざまな症状に対し、その患者さんに最も適した治療法を選択しながら治療を行ってまいります。