日本では口腔癌の占める割合は癌全体の約2%にすぎませんが、直接生命にかかわる重大な病気であることには違いはありません。また他部位の癌とは異なり、口腔癌は「食べる」、「飲む」、「話す」、「呼吸する」などといった機能の他に、審美的な面からも私たちのクォリティオブライフに直接深く結びついているため、クォリティオブライフが著しく低下してしまう場合があります。

口腔癌の中では舌癌の発生頻度がもっとも高く、口腔癌の約30パーセントを占めます。また、口腔癌は 50 才以上に多く、女性よりも男性に多い傾向があります。

治療には、癌のできている部位や病期、組織の特徴などを総合的に診断して、治療方針を決めますが、一般的には手術療法、放射線療法、抗がん薬による化学療法、さらに免疫療法と呼ばれる4つの方法を、単独あるいは組み合わせて治療します。

口の中は、鏡などを使えば誰でもご自分で簡単に見ることができる場所です。口腔癌は胃癌や肺癌などとは違って、直接目で見て調べることができることから、比較的早期発見が容易な癌であると言えます。したがって口の中を日常的にご自身でチェックしていれば、口腔癌を初期の段階で発見することも十分に可能なのです。

治癒率はがんの発生部位、病期により異なりますが、口腔癌全体の5年生存率は約60~70パーセントです。初期のものではほとんどの症例は治癒しますので、恐れずにできるだけ早期に受診することが大切です。 もし気になる症状が見られたらできるだけ早く口腔外科専門医の診察を受けて下さい。治りにくい傷やしこり、腫れなどを、そのうち治るだろうと放置したり、見過ごしたりしないで下さい。早期発見、早期治療こそが口腔癌の治療にとって最も大切なことなのです。

前癌病変

がん病変 ( 現在はがんにはなっていないが、そのうちがんになる可能性があるもの ) である白板症(はくばんしょう)から癌化したと思われるものも多くみられます。