BRONJ(bisphosphonate related osteonecrosis of the jaw)
BP 系薬剤の投与を受けた患者さんにおいて、顎骨壊死・顎骨骨髄炎が発現したと報告されています。
顎骨の壊死がおこることは 2003 年に米国で初めて報告され、日本でも BP 系薬剤の普及に伴い増加しています。報告された症例の多くは、抜歯等の侵襲的歯科処置や局所感染に関連して発現しており、特に抜歯した場合にその部位付近で発現しています。
BP 系薬剤には注射剤と経口剤があり、顎骨壊死・顎骨骨髄炎は癌患者に投与される注射剤で多く報告されていますが、まれに骨粗鬆症患者等に投与される経口剤でも報告されています。
わが国における骨粗鬆症患者は推定約 1,000 万人で、高齢の女性では約半数が骨粗鬆症と考えられています。
このことからも BP 系薬剤内服の可能性はかなり高いと思われます。
これらに関しては、まず患者さんにBP系薬剤の服用を申告してもらう必要があります。
国内で販売されている BP 系薬剤には、骨粗鬆症に対する経口薬と乳癌や前立腺癌の骨転移などに対する注射薬があります。
骨粗鬆症患者における BP 経口薬での BRONJ 発症頻度は 0.01~0.04 %(豪州調査)と高くはありませんが、一旦発症すると難治性であることが問題です。
大部分は注射薬でおきており、発生率は 0.88~12 %と報告されております。
しかし、抜歯をすると約 10 倍に増加すると云われております。
体内に入ったBPは骨を壊す役割をもつ破骨細胞の機能を抑え骨の強度を高めます。
しかし、骨の代謝を抑制しているため、この時期に抜歯などを行うと周辺の骨の治癒が悪い、骨髄炎や壊死などをおこすと考えられております。
壊死をおこす平均的な期間は注射薬で 12 ~ 24 ヶ月、経口薬で 36 ヶ月で個人差があります。
顎骨壊死の症状は、持続的な骨露出の他、顎が重い感じ、全身痛、しびれ、歯痛様疼痛、軟組織感染などがみられます。
BP 系薬剤を使う時には、歯科治療を前もって行い、使用中も口腔内を清潔に保つことが大切です。
使用中は、一般的に抜歯、歯肉などを切除する歯周病治療、インプラントの埋め込みなど外科的処置を避けることが勧められています。
BP 系薬剤投与患者であっても、経口薬の場合には、注射薬に比べてリスクは低いとされておりますが、むやみに歯科治療を避けたり、必要な BP 系薬剤を休止するようなことは好ましくありません。
BP 系薬剤を処方している担当医師と歯科医師との間で十分な相談を行ったうえで、担当医師により薬剤の使用の延期、休止を決定することが重要です。